なぜ、ライ麦パンは健康に良いのか。

ライ麦は健康上のメリットがたくさんあるというお話を聞いたことはありますか。また、ライ麦はグルテンフリーなのでしょうか。
ライ麦を使ってみたいけれど、実際にどのような穀物なのか、またどんな味がするのか、実際の使い方がわからないなど、さまざまな理由で試したことがないのは少し勿体無いかもしれません。

今回の記事では、ライ麦の歴史や小麦との比較などから、一体どんな穀物なのか。初心者の方でもわかりやすく、ライ麦の魅力について迫りたいと思います。

ライ麦はもともとは雑草だった。

ライ麦は小麦族に属しており、小麦と大麦の両方と密接な関係を持っています。地理的起源としては、コーカサス地域とされるトルコ東部の近くで発祥したとされており、もともとは小麦畑や大麦畑の雑草だったと言われています。ライ麦粒は、主に細かく製粉されてパンに使われますが、粒そのものを使った料理やビールの製造にも活用されています。ドイツや北欧では、ライ麦パンが人気を博しており、小麦パンと比べて密度が高く、酸味が強く、素朴な味わいが特徴です。

ライ麦の生産について。

ライ麦は2000年以上もの間栽培されてきました。19世紀まで、パンを作るための主要な穀物でしたが、後に小麦に置き換えられました。主要なライ麦生産国にはドイツ、ポーランド、ロシアがあります。ライ麦は、小麦や大麦と比べて約30%少ない水分で育つため、乾燥した寒冷な条件でも栽培が可能です。

小麦よりも食物繊維が豊富。

栄養価においても、ライ麦は小麦に勝るとも劣らない成分を持っています。白い食パンや全粒粉パンと比較して、ライ麦パンには食物繊維が豊富で、ビタミンやミネラルも多く含まれています。特にビタミンBが豊富で、さらに通常のパンよりも鉄分が約30%、カリウムが約2倍含まれているとされています。

加えて、小麦の全粒粉と比べると、ライ麦には2倍の食物繊維が含まれています。食物繊維は腸内環境を整えるだけでなく、満腹感を早く感じさせるため、ダイエット効果が期待できます。さらに、ライ麦は新陳代謝を促進させる効果があり、血糖値の急上昇を抑えるとができ、糖尿病の予防にも役立ちます。

ライ麦を食べると長生きする。

ライ麦を摂取することで、健康寿命が延びる可能性があるとも言われています。これは、長寿遺伝子として知られる成分がライ麦に含まれているためです。

私たちの体には、長寿遺伝子とも称される「サーチュイン遺伝子」が備わっています。この遺伝子が活性化されると、老化を抑制し、糖尿病や炎症など様々な疾患に対する効果が期待されます。

世界中で行われている研究により、サーチュイン遺伝子の活性化が寿命に影響を与えることが示されています。ライ麦がその効果を発揮することが確立されたのは、東京工科大学の今井伸二郎氏の研究チームによるものでした。彼らの研究により、ライ麦の皮に含まれるアルキルレゾルシノールがサーチュイン遺伝子を活性化させる作用があることが、ショウジョウバエを用いた実験によって発見されました。

これらの研究結果から、ライ麦を摂取することが健康寿命の延長につながる可能性があることが分かります。ライ麦パンは栄養価が高く、健康にも良い効果をもたらすため、積極的に摂取することがおすすめです。

ライ麦にはグルテンは含まれているのか。

小麦との違いにより、グルテンが含まれていないと考える方もいるでしょう。ライ麦は小麦や大麦と共に、三大穀物の一つに数えられています。結論から言うと、ライ麦にもグルテンは含まれています。

グルテンフリーの食生活を求めている方は注意が必要です。なぜなら、ライ麦はグルテンフリーではないためです。ただし、ライ麦には小麦や大麦と比較して、はるかに少ないグルテンが含まれているという特徴があります。

ドイツで行われた研究では、小麦粉100gあたり約8.92gのグルテンが含まれているのに対し、ライ麦粉はわずか3.08gしか含まれていないことが明らかになりました。これは、小麦に比べてライ麦のグルテン量が約1/3程度であることを意味しています。そのため、ライ麦パンは小麦パンに比べて膨らみにくく、密度が高い特徴があります。

小麦アレルギーやグルテン過敏症の方は、ライ麦も同様に避けるべきです。しかし、特定のアレルギー症状がなく、健康上の理由でグルテンを控えたい方には、小麦をライ麦に置き換えてみることがおすすめです。

酸味のあるナッツのような風味。

ライ麦パンは、小麦パンに比べて色が濃く、ナッツのような風味と酸味が特徴的な素朴な味わいが楽しめます。また、わずかなモルトのマイルドなフレーバーも感じられます。一般的には、ライ麦粉とライ麦粒を混ぜてライ麦パンが作られます。

ライ麦粉は、通常のパンと比べて膨らみにくい性質があります。ドイツのライ麦パンは、多くの場合ライ麦が90%以上含まれていますが、日本では2割程度しか使用されていません。これは、ライ麦の酸味が強く、日本人の好みに合わせるために、小麦粉を混ぜて使用する必要があるからです。しかし、ドイツでもライ麦と小麦のミックスパンが非常に人気があります。これは、ライ麦が50%以上90%未満含まれ、残りが普通の小麦粉をブレンドしたパンです。

初心者の方には、まずはライ麦粉10%、小麦粉90%のブレンドから試すことをおすすめします。次に、ライ麦の割合を徐々に増やし、ライ麦と小麦粉の様々な組み合わせの味を比較してみてください。この方法で、自分に合ったライ麦パンの味を見つけることができるでしょう。

ライ麦パンは酸味があるナッツのような風味が特徴であり、健康的な食事の一部として楽しむことができます。グルテンを控えたい方や、新しい風味を求める方には、ライ麦パンがおすすめです。ただし、小麦アレルギーやグルテン過敏症の方は、ライ麦も避けるべきであることを忘れないでください。

ライ麦の紹介

当店では4種類の北海道産ライ麦を提供しています。粗さについては写真をご覧ください。

ライ麦粉
ライ麦石臼全粒粉
ライ麦細挽き全粒粉
ライ麦全粒粉

まとめ

今回の記事ではライ麦の歴史や成分、健康効果などを紹介させていただきました。
ライ麦はグルテンフリーではありません。グルテン過敏症の方はグルテンフリーと勘違いされることがあるので注意する必要があります。ただし、グルテン量は少ないので、健康上の理由でグルテンを避けたい方にはおすすめです。

ライ麦は非常に栄養価が高く、健康上のメリットはたくさんありそうです。しかし、ライ麦パンは膨らみにくいため作るのが難しく、特有の酸味が日本人好みではないとも言われています。はじめて作る方は少量から試してみてください。

当店では北海道産のライ麦を提供しています。多くのパン屋さんに愛用されている人気商品です。ぜひ、お試しください。

参考文献:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5325591/(ライ麦グルテンの研究)
https://www.lybrate.com/topic/rye-benefits-and-side-effects(ライ麦の歴史、生産)
https://www.healthline.com/nutrition/is-rye-bread-healthy#varieties(ライ麦の健康効果)
https://www.nature.com/articles/s41598-022-16471-1(サーチュイン遺伝子の研究)