「外国産に匹敵する製パン性を持つ国産小麦は存在するのでしょうか?」
これまで外国産小麦に頼っていた方々の中には、国産小麦に挑戦したいと思いつつも、「製パン性は保証されるのか?」と懸念されている方もいるかもしれません。
確かに、国産小麦は外国産小麦と比較してタンパク質の含有量などの特性が異なるため、同じレシピを使用してもパンの味わいや扱いやすさが変わることがあります。
それにもかかわらず、外国産小麦を使用してきたが国産小麦に移行したいと望むベーカリーシェフも増えています。
この記事では、外国産から国産への切り替えを検討中の方向けに、私たちが自信を持っておすすめする国産小麦「みのりのちから」の魅力をご紹介します。
みのりのちからがなぜ製パン性に優れているのか
“製パン性が優れている”と言われても、それが具体的にどの点で優れているのかが不明瞭な場合がよくあります。一般的には、発酵時や焼成後のボリュームが豊富で、水分をよく吸収する小麦粉が高い製パン性を持つと考えられています。今回、私たちは以下の基準を用いて、外国産小麦との比較を通じて製パン性の評価します。
・ボリューム
・吸水性
・気泡分布
・保存性
・作業性
2020年に奨励品種として「みのりのちから小麦」が誕生。製パン性に優れた小麦として一風しました。外国産小麦1CW使用のものよりも製パン性が高いと農研の実験で明らかになりました。
農研のデータ:超強力小麦「みのりのちから」の製パン特性
みのりのちから小麦の製パン性評価
具体的に、みのりのちから小麦が他の品種と比べてどのように優れているのかについての比較実験が農研機構により公開されています。この比較では、「カメリヤ」、「ゆめちから」のロング粉と 2等粉、そして「みのりのちから」のロング粉と2等粉の5品種が対象となっています。全て同一のレシピを使用し(使用する浄水量のみを変え)、焼き上げた結果、どのような違いが表れたのかに注目しています。
※画像をクリックで大きく表示されます。
ボリュームの違い
パンのボリュームはパンの見た目や食感に大きな影響を与えます。みのりのちから小麦の2等粉は特にボリュームが大きいことが確認され、カメリヤを上回る結果となっています。
気泡分布
気泡の分布に関しては、みのりのちから小麦を使用したパンでは大きな気泡がほとんど見られず、カメリヤやゆめちから小麦と比較して気泡が細かく均一に分布していることが観察されました。
吸水性
みのりのちから小麦は、カメリヤと比較して約1.5倍の吸水率を示しています。これは、みのりのちから小麦が非常に高い吸水性を持っていることを意味し、パン作りにおいて必要な水分を保持しやすいことを示唆しています。この特性はパンの質感や大きさに影響を与え、優れた製パン性を促進する重要な要素です。
作業性
みのりのちから小麦はグルテンが豊富で固くなりやすいため、他の小麦よりも混合に時間がかかることがあります。しかし、実験によれば、「きたほなみ」小麦を少量混ぜることで作業性が向上し、扱いやすくなることが示唆されています。
保存性
「みのりのちから」小麦は、パンの鮮度保持能力においても優れています。特に、焼成後1日から 3日経過した際のパンの硬さの増加が緩やかで、他の品種と比べてパンが硬くなりにくいという特徴があります。
これは、パンが長持ちし、賞味期限が延びることを意味し、消費者にとっても魅力的な点です。この保存性の高さは、「みのりのちから」のパンが日持ちするだけでなく、その美味しさを長期間保つことができるという利点を提供します。
外国産小麦1CWから国産へ変えたい方におすすめ
上記の実験結果によると、「みのりのちから」小麦は外国産小麦と同等またはそれ以上の製パン性を有していることが示されています。
従来、外国産小麦から国産小麦への切り替えは、製パン性の差異に起因するレシピの調整や作業の複雑さが課題となっていました。しかし、「みのりのちから」小麦は、その高い吸水性や優れた保存性などの特性により、外国産小麦に劣らない、あるいはそれを上回る製パン性が期待できます。
国産小麦への切り替えを検討中の方には、「みのりのちから」小麦の使用を強くおすすめします。その卓越した特性は、製パン過程での調整を容易にし、最終製品の品質向上に寄与することでしょう。
みのりのちからが誕生した経緯
かつて、国産小麦は「製パン性に劣る、取り扱いが難しい」との見方が一般的でしたが、最近では国産パン用小麦の研究が進み、多くの品種が開発されています。
その一つが、秋まきながらも非常に強力な品質を持つ「ゆめちから」です。ただ、「ゆめちから」は収量が少ないという問題がありました。これを解決するため、山本忠信商店は農研機構と協力し、新しいパン用小麦の開発に挑戦しました。
その結果、「ゆめちから」と「きたほなみ」という異なる特徴を持つ二つの品種が掛け合わされ、新しい小麦品種「みのりのちから」が生まれました。この新品種は秋まきで、収量は少なくとも10%の増加が見込まれています。
「みのりのちから」小麦は、高い収穫量と病気に対する抵抗力を持ち、特にグルテンの強さが際立っています。
チホク会に加盟する300以上の農家が「みのりのちから」小麦の栽培を試験的に行い、好天に恵まれたことも手伝って、過去2年間で20%以上の収量増加を実現しました。これは高品質でありながらコストパフォーマンスにも優れた小麦です。
今では、北海道の有名なパン屋でもこの小麦が使われ、その高い製パン性と独特の香りが消費者に受けており、注目を集める品種となっています。
まとめ
今回の記事では国産小麦「みのりのちから」をご紹介しました。
みのりのちから小麦は、強いグルテン力で優れた製パン性能を発揮し、病気に強いことで収量も期待できます。この小麦はパン全般に適し、特にふっくらと柔らかな食パンに仕上がります。国産小麦への切り替えを検討するなら、みのりのちから小麦が最適です。
ベーカリスタでは、パン作りに役立つ情報や、パン作りをより楽しむためのアイデア、さらにパンや小麦に関する知識をお届けします。