古代から変わらない小麦、スペルト小麦の魅力とは。

スペルト小麦とは

近年非常に人気の高まって来ている北海道産のスペルト小麦について、どんな小麦なのか?現代小麦との違いは?アレルギーに関してどうなの?など、よくご質問がある点を中心にまとめてみました。

スペルト小麦とは古代から食べられていた小麦の原型に近い品種です。”古代小麦”とも言われています。栄養価が高く、ほとんど人工的な手を加えられないまま、今もなお栽培され続けています。栄養面や古代から受け継ぐ味わい、小麦アレルギーの反応を起こしにくい小麦ということから、健康志向の人たちの間で注目を浴びている人気の小麦品種です。

※この記事では、現代小麦とは現代の食文化に合わせて品種改良された普通小麦、古代小麦とは品種改良があまりされていない小麦の原型に近い古風の小麦と定義します。

スペルト小麦はどれくらい昔から作られていたのでしょうか

スペルト小麦はエンマー小麦と野生小麦(タルホコムギ)の自然交配によって誕生した品種であると言われています。さまざまな地域で発見されているため、起源を具体的に説明するのは非常に難しいですが、最初の考古学的証拠では紀元前5,000年前(今から約7,000年前)の南コーカサスだと言われています。しかし、有力な証拠が残されているのは中央ヨーロッパです。石器時代にはスペルト小麦が栽培され、食べられていたと言われています。

初めて人間の体内から古代小麦が確認されたのは、1991年にアルプス(イタリアとオーストリア付近)で発見されたアイスマンからです。紀元前5300年ほど前に生きていたと言われています。また、ヨーロッパでは数多くのスペルト小麦の残骸が見つかっています。このことから、広く中央ヨーロッパを中心にスペルト小麦が食べられていたのではないかと考えられています。

エンマー小麦とは:
スペルト小麦よりも前に栽培されていた小麦(栽培品種)です。今から約9,000年以上も前に遡ると言われています。

品種改良の違い ー現代小麦と比較

スペルト小麦は古代小麦ともいわれ、あまり品種改良はされてきませんでした。つまり、先人たちが食べてきた古くからある小麦の形態とほとんど変わらないということです。昔の小麦は現代小麦ほどパンに向いている小麦ではありません。つまり、現在のパンのようにふっくらと膨らむ製パン性はありません。

生産のしやすさの違い ー現代小麦と比較

スペルト小麦は現代小麦と比べ、粒が硬く、もみがらと言われる厚い皮で覆われています。また、背丈も高く、穂も太いのが特徴です。一方で現代小麦は粒がスペルト小麦と比べて柔らかく、また、背丈も低く、穂が細いです。小麦は背丈が低い方がより生産がしやすく、風で倒れるなどの気候の影響を受けにくいと言われています。つまり、スペルト小麦は現代小麦と比べ、生産・加工に手間がかかっているのです。収穫された粒は、乾燥後に製粉されることがほとんどですが、スペルト小麦は厚い皮で覆われているためそれを剥く工程が入ります。さらに、粒が硬いため、最初に表面部分を荒削りしてから製粉するため、加工に非常に手間と労力がかかっています。

成分の違い ー現代小麦と比較

スペルト小麦は現代小麦と比べて、ミネラル成分の値ではどのように違うのでしょうか。まず大きく一つ挙げられるのは、栄養価の ”高さ” の違いです。スペルト小麦はミネラルが現代小麦と比べて圧倒的に多く含まれています。例えば、体内の消化を促してくれる働きがあるマンガンに関しては、現代小麦と比較して約13倍も含まれています。

小麦アレルギー反応性の違い ー現代小麦と比較

現代小麦が食を支えている一方で、小麦アレルギー(小麦の体的拒否反応を示す症状)が多くみられるようになりました。しかし、ヨーロッパ諸国の研究機関を初め、スペルト小麦のアレルギー反応性について、少しずつ解ってきました。セリアック病以外の患者による小麦アレルギーの反応性は低いということがさまざまな研究で確認されています。

製パン性と味わいの違い ー現代小麦と比較

先述のとおり、製パン性は現代小麦と比べるとやや劣ります。ホームベーカリーで焼いても、膨らみには物足りなさを感じるかもしれません。現在市場にあるスペルト小麦粉のほとんどは全粒粉タイプであるため、現代小麦粉とブレンドして使用するケースがほとんどです。

スペルト小麦は現代小麦と比べて、ミネラルが非常に多く含まれているため、穀物特有の風味の強さを感じられます。スペルト小麦の粉の色は、薄い茶色です。スペルト小麦を使用してパンを焼くと、少しハードなパンとなり、ナッツのような香ばしい風味とチョコレートのような甘い香りがします。吸水率も高く、もっちりとした食感にもなります。現代小麦とブレンドして焼いても、スペルト特有の香り、味わいが楽しめる非常に美味しいパンに仕上がります。