全粒粉と普通の小麦粉との違いは?

全粒粉は小麦の粒を丸ごと挽いたものなのか。

みなさんは全粒粉を使用したことはありますか。また、現在使用している全粒粉は粗挽きですか。細挽きですか。全粒粉とは、小麦粒を丸ごと挽いたものと理解されることが多いです。しかし、製品の中には外皮を少し削った後に挽いたものや、胚芽のみを除いたもの、粒を丸ごと挽いたものなど、さまざまです。製品を手にとって、粉を見比べてみていただくとわかりやすいのかもしれません。

粒を丸ごと粗挽きにした全粒粉はグラハム粉とも言われています。石臼で細かく挽いた全粒粉と比べ、粗挽きであるため、粒の食感を楽しむことができます。

今回の生地では、全粒粉とは皮(ふすまなど)を含む小麦粉と位置づけし、強力粉1等粉と比較しながら違いの紹介をしていきたいと思います。

項目 全粒粉 強力粉
小麦粒の部位 粒を丸ごと挽いたもの 中心部のみを挽いたもの
成分 灰分が高い
ミネラルが豊富
灰分が低い
ミネラルが少ない
見た目 茶色い 真っ白
吸水 水は入りづらい 水は入りやすい
グルテン力 弱くなる 強い
生地の大きさ 小さい 大きい
膨らみ 小さい 大きい
風味 強い 弱い
食感 つぶつぶ食感 滑らか

 

小麦粒の部位の違い

まず、この図をご覧ください。

小麦粒は大きく分けて、外皮、アリューロン層、胚芽、胚乳で形成されています。小麦粉として使用されている部分は胚乳の部分です。

前述でもあるように、強力粉は麦粒の中心部分を挽いたもの、全粒粉は胚芽や表面を含む粒を丸ごと挽いたもの。小麦のミネラルの大部分はカリウムとリンであると言われています。皮にはマグネシウムやマンガンも多く含まれています。

成分の違い

全粒粉と強力粉の成分の大きな違いは灰分の量です。つまり、ビタミンなどミネラルが豊富であると言えます。

カリウムmg マグネシウムmg リンmg 鉄mg 亜鉛mg マンガンmg
強力粉1等粉 89 23 64 0.9 0.8 0.32
全粒粉 330 140 310 3.1 3.0 4.02

 

ビタミンB1mg ビタミンB2mg ナイアシン ビタミンB6 ビオチンμg α-トコフェロールmg β-トコフェロールmg
強力粉1等粉 0.09 0.04 0.8 0.06 1.7 0.3 0.2
全粒粉 0.34 0.09 5.7 0.33 11.0 1.0 0.5

 

また、でんぷんは中心部の方が多い傾向にあります。粒の中心部になればなるほど、蛋白値は低くなります。ですので、一等粉と言われる灰分の少ない強力粉はタンパク値が低くなる傾向にあります。しかし、中心部のタンパク質はグルテンを形成しやすく、製パンとしての性質は良いと言われています。

小麦の灰分量は品種と天候条件で決まることが多く、ほとんどが1.2〜1.8%と言われています。また、灰分はアリューロン層と言われる胚乳にある薄い層に非常に多く含まれており、外皮や胚芽にも多いが、胚乳には少ないと言われています。

成分 胚乳の周辺部 胚乳の中心部
タンパク質の量 多い 少ない
タンパク質の性質 良い
灰分の量 多い 少ない
良い(白い)
でんぷんの量 少ない 多い
脂質の量 多い 少ない
ビタミンの量 多い 少ない

見た目の違い

普通、一般的に流通している強力粉は真っ白ですが、全粒粉は皮の部分が含まれているため、粉の色が少し茶色です。また、挽き方によって異なる場合があります。粗挽きの全粒粉はより茶色く見えるかもしれません。

吸水の違い

全粒粉をブレンドした場合、普段より水の量はどのように調節すれば良いのでしょうか。結論から言うと、普段よりもやや少なめに入れたほうがいいと言われています。

全粒粉は水を ”吸いやすい” です。また、外皮に近い二等粉も同じです。 ただし、水を吸う=吸水が高いとは少し別の話になります。外皮の部分にはでんぷんは含まれていないので、生地を膨らませるための吸水にはなりません。ですので、水を多く入れすぎると作業性面で生地がベタつき、発酵時ボリュームが出ない。また、水が多く含まれているので焼成時に火通りが悪く、ネチャつく食感になります。

全粒粉をブレンドする場合、普段よりも少し水の量を少なめに入れることをおすすめします。ミキシング時に全粒粉は水を吸うので、一見まだ水が入るように感じます。ですが、全粒粉の外皮が吸った水は、ただ蒸発するだけなので、発酵と焼成の妨げの原因となります。

グルテン力

胚乳の中心よりも、胚乳周辺や胚芽、アリューロン層に多くタンパク質が含まれています。しかし、これらのタンパク質は普通の植物性タンパク質であり、グルテンを作るタンパク質は胚乳にしか含まれていないと言われています。小麦粉が胚乳の中心部位を使用されるようになったのは、小麦をパンやめん、菓子などに幅広く加工しやすいからです。中心部に行くほど蛋白の性質はパンに近いものの方がグルテンになった時の性質はよくなると言われています。

外皮 アリューロン層 胚乳 胚芽
タンパク質含有量(%) 10.8 22.9 10.2 34.1

 

生地の大きさ

全粒粉の方が比重が大きいため、生地は小さくなりがちです。つまり、同じ250gでも普通の強力粉の方が比重が軽いため、ホームベーカリーで全粒粉を混ぜたりするなら、全体量を少し多めに設定してもいいかもしれません。

膨らみの大きさ

全粒粉のふすまなどがグルテン膜を壊してしまうため、やや膨らみが弱まってしまう可能性があります。全粒粉の粗さによって異なりますが、全粒粉の粒や全粒粉に含まれるふすまなどが発酵を妨げ、結果として生地があまり膨らまないことがあります。

味の違い

全粒粉の方が香りが強く、とても香ばしいという特徴があります。全粒粉を少し混ぜるだけでも、より小麦の香りを楽しむことができます。少しでも穀物の香りを感じたい方には全粒粉の使用は非常におすすめです。

食感の違い

強力粉は滑らかな舌触りだが、全粒粉にはふすまが含まれているため、つぶつぶ食感が感じられます。もちろん、全粒粉の挽き方や粒度によって異なります。できるだけ全粒粉を多く使用したい場合は石臼はるゆたか全粒粉石臼はるきらり全粒粉などの細挽きのものがおすすめです。滑らかな食感に仕上がります。また、つぶつぶ食感が欲しい方には石臼春よ恋全粒粉など粗挽きの全粒粉がおすすめです。

まとめ

今回は全粒粉とは何か、また強力粉と比べて何が違うのかを詳しくみてみました。全粒粉の特性を理解した上でブレンドしてパンを焼くと、より一層パン作りの幅が広がります。是非試してみてください!

参考:小麦粉利用ハンドブック 著者 長尾精一