今回の記事では、除草剤に関する情報を提供し、特にグリホサートについて詳しく解説します。グリホサートは、アメリカの事件をきっかけに発癌性があるとして世界的に注目を集めました。現在、ヨーロッパ諸国をはじめとする世界各国で規制や禁止が進められている除草剤の一つです。一部の食に関心のある方々は既に知っているかもしれません。
では、小麦栽培においてグリホサートは使用されているのでしょうか?
結論から言うと、現在も多くの場合で使用されています。特に、輸入小麦に対しては注意が必要です。北米産の小麦には、ほとんどの場合で残留農薬が検出されています。
この記事では、グリホサートがどのような成分であり、現在どのくらい使用されているのかをみなさんに共有していきたいと思います。
グリホサートについて
「グリホサート」は、一般的にはあまり馴染みがないかもしれませんが、実は世界中で広く使われてきた除草剤の主成分の一つです。では、なぜグリホサートがこんなに話題になったのでしょうか。それは、発がん性や腸内環境への影響、地球環境への悪影響が指摘されたためです。
グリホサートは、「ラウンドアップ」という商品名で世界中で販売されており、過去には世界で最も多く使用されていた除草剤です。2018年には、アメリカで約3200億円の賠償金が支払われる事件が発生しました。この事件をきっかけに、世界各地でグリホサートの危険性が取り上げられるようになりました。現在、ヨーロッパ諸国をはじめとする世界各国で、グリホサートの規制や使用中止を求める動きが活発化しています。各国でのグリホサート禁止・規制の主な動きがあった年を、以下の表でまとめてみました。
2015年 コロンビア、イギリス 2016年 スイス、イタリア 2017年 中東6カ国(アラブ首長国連邦、サウジアラビア他)、EU6カ国(フランス、ギリシャ、ベルギー他) 2018年 チェコ、アメリカ 2019年 ベトナム、オーストラリア、インド、ドイツ、トーゴ 2020年 タイ、メキシコ |
※新聞「農民」のデータ等を参考にしています。
グリホサートとラウンドアップ
グリホサートとは
グリホサートは、植物のアミノ酸合成を阻害することで雑草を枯らす、広く使用されている除草剤の一種です。農業、造園、林業など多様な分野で使われており、特に遺伝子組み換え作物にも利用されています。しかし、発がん性などの健康リスクが議論されており、国や地域によって規制が異なります。
ラウンドアップとは
ラウンドアップは、グリホサートを主成分とする除草剤の商品名で、モンサント(現在はバイエル)が開発しました。ラウンドアップにはグリホサートに加えて毒性を高める補助剤が含まれており、この補助剤の影響で全体の毒性が増加します。発がん性が問題視され、多くの訴訟が提起された結果、世界各地で規制や禁止が進んでいます。
グリホサートとラウンドアップの違い
グリホサートは単体の化学物質で、比較的低毒性とされています。一方、ラウンドアップはグリホサートに補助剤を加えた製品であり、補助剤によって毒性が高まります。このため、ラウンドアップの方が規制が厳しい場合が多いです。
日本でのグリホサート使用状況は?
日本では現在、グリホサートはどの程度使用されているのでしょうか。また、今後も使用が続くのでしょうか。
結論から言うと、日本ではグリホサートの規制が緩和されるという、世界とは逆の動きが見られます。
国産小麦に関しては、特に北海道産の小麦では、グリホサート使用の事例は今のところ報告されていません。しかし、輸入小麦には使用されていることが確認されています。世界中に大量のグリホサートが余っていることが原因で、輸出向け小麦に大量に使用されるようになりました。その結果、日本国内にグリホサート使用の農作物が大量に流入し、グリホサート大国となってしまいました。
実際にグリホサートはどのくらい検出されたのか
2019年に農民連食品分析センターがグリホサート残留量を調査し、国産小麦と外国産小麦のいくつかの銘柄で比較しました。その結果、日本に輸入される小麦のほとんどに大量のグリホサートが検出されました。一方で、国産小麦のグリホサート残留調査では、検出されませんでした。
ただし、今後国産小麦でグリホサートが使用される可能性はあります。
2017年に厚生労働省によってグリホサート使用の基準が緩和されました。農作物によって変わりますが、小麦では5ppmから30ppmに増加し、なんと6倍の緩和となりました。また、お米のグリホサート基準と比べて約3000倍も緩いのです。詳しくは農民連食品分析センターという研究機関のページで確認できます。
グリホサートを避けるための小麦粉の選び方
「グリホサートはできるだけ避けたいけど、食生活に制限をかけたくない。」という方は、まずは輸入小麦を避けることをおすすめします。現状では、国産小麦がより安全と言えます。それでも輸入の小麦粉を使いたい場合、ヨーロッパ産(特にフランス産)を選ぶのが良いでしょう。その理由は、先程の残留量調査で、フランス産小麦粉がアメリカ・カナダ産の小麦粉と比べ、かなり検出率が低いためです。ヨーロッパ全体では、環境問題を背景に、農薬散布を抑制する動きが見られます。しかし、今後の輸入小麦にはグリホサートが使われていく可能性は十分にあります。なぜなら、輸入農作物に関しては、どの国も制約が少ない傾向にあるからです。この情報については今後注目していく必要があります。また、国内の農作物や国産小麦についてもグリホサートの使用禁止はないため、完全に避けたい場合は、有機小麦粉を選ぶことをおすすめします。有機小麦粉はグリホサートが使用できないだけでなく、自然由来の農薬・肥料に限定されています。さらに、慣行栽培との距離も除草剤が散布されないように、十分な距離を設けて栽培されています。そのため、グリホサートの検出率は極めて低いと言えます。ただし、風や雨などの外的環境によって影響を受ける可能性があるため、100%検出されないとは言い切れないのが現状です。
まとめ
世界ではグリホサート禁止の方向に向かっておりますが、国内では緩和されるという方針となりました。国内小麦は今後グリホサートを使われていき、決して安心と言えるものではなくなる可能性が十分に考えられます。 今後も国内や北海道産小麦のグリホサート散布状況について、注目していきたいと思います。