パンの⾷品添加物を避ける⽅法。

パン作りに使用する食品添加物を知っていますか?意外にもパンには食品添加物がたくさん使用されています。また、手作りのパンでも使用する材料によって食品添加物が含まれている場合があります。その代表的なものにはイーストフードと乳化剤というものがあります。

「食品添加物はなるべく避けたい。」「イーストフードは使っても健康上に問題ないのか知りたい。」など、食品添加物に関するお問合わせをたくさんいただきました。

今回の記事ではパンに使用される食品添加物についてのご紹介と、健康上の影響について考えていきたいと思います。また、できるだけ無添加のパンを選びたい方のために、見えないところで使用されている食品添加物と避ける方法をお教えします。

ベーカリスタではパン材料を取り扱う私たちだからこそ解説できる、パンや小麦に関する専門的知識をお届けしています。

そもそもなんで食品添加物を使うの?

そもそも、なぜパンには食品添加物が必要なのでしょうか。また、なぜ食品添加物を過剰に摂取すると良くないと言われているのでしょうか。

食品添加物とは、簡単に一言で表すと化学物質のことを指します。原料から化学的な合成をして人工的に作られた物質です。

食品添加物の目的はさまざまです。
主に使用される目的で一番多いのが保存期間を延ばすためです。その他にも品質や特性を改善するため、見た目や風味を改善するため、栄養価を補強するため、製造工程の効率化などが挙げられます。

食品添加物は身体に影響があるのか。

では、なぜ世間では食品添加物は体によくないと言われているのでしょうか。
化学物質はといえども、その多くはもともと自然界に存在する原料から抽出されています。もとを辿れば天然素材なのに、食品添加物の方が体に悪いと言われている理由はなぜでしょうか。
その大きな理由として、純度の違いです。純度というと、少し分かりづらいかもしれませんが、簡単に表すならば、成分に偏りがあること。つまり、砂糖をたくさん食べすぎると、糖の過剰摂取により肥満や糖尿病になりやすいのと同様に、食品添加物に含まれる化学物質を過剰すると、体に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

しかし、食品添加物は厚労省によって使用量が制限されており、身体にはほとんど影響を及ぼさないような基準値で、適切な使用方法によって、安全性が確保されています。

それでも食品添加物の過剰使用や不適切な使用は、健康への悪影響を引き起こす可能性があるため、加工食品や食品添加物の使用には十分注意する必要があります。

イーストフードは食品添加物なのか。

パン材料の一つにイーストフードというものがあります。市販のパンの食品表示によく記載されていることがあるイーストフード。これは食品添加物なのでしょうか。また、なぜイーストフードがパンに使用されることがあるのでしょうか。

そもそも、イーストフードを使用するメリットにはどんなものがあるのでしょうか。
イーストフードはその名の通り、イーストのフード(餌)です。イーストフードはイースト(パン酵母)と勘違いされやすいですが、イーストではありません。パンに使用する場合は別途イースト(パン酵母)を用意する必要があります。イーストフードはフランスパンや食パンなど、発酵力の必要なパンに使用されることがあります。

では、イーストフードは食品添加物なのでしょうか。
結論から、イーストフードそのものには食品添加物として扱われるケースがほとんどです。また、市販のイーストフードのほとんどには塩化アンモニウムなどの食品添加物が含まれています。ただし、イーストフードそのものが全て食品添加物でできているわけではありません。

乳化剤は健康上に影響はないのか。

イーストフードの次によく使用されるパンの食品添加物は乳化剤です。
乳化剤とは、食品の質感を改善し、油と水を混合させるための添加物です。と言われても、いまいちよく分かりませんよね。後ほど詳しく説明します。

そもそも、本来混じり合わない油と水をわざわざ混合する必要ってあるのでしょうか。
油と水を混合させる方法のことを「乳化」と言います。乳化って聞いたことはあるけれど、実際どういう現象なのか、どんなメリットがあるのか、いまいちわからない方も多いのではないでしょうか。今回の記事で少し説明させていただきますね。

乳化とは、前述の通り、水と油を混合させることです。乳化している食品はどんなものがあるのでしょうか。
代表的なもので、牛乳、バター、マーガリン、マヨネーズ、チョコレート、ホイップクリームなどが挙げられます。
乳化のメリットは、水と油が分離したままだと油っこくて水っぽくなってしまいますが、乳化させることでマイルドな仕上がりになります。例えば、パスタのペペロンチーノを作る際に、途中でパスタの茹で汁を加えて乳化させるのは、そのためです。

次に乳化の仕組みについて簡単に説明します。
本来ならば、水と油は混じり合うことはありません。なぜなら、その両者の間には見えない膜が存在し、互いに相反あっているからです。水と油を混合させる、つまり乳化させるためには、その幕を破壊するしかありません。簡単な方法には思い切り振るというのが挙げられます。ドレッシングなども使用する前によく振るのは水と油を乳化させるためです。しかし、それだけでは幕を破壊するのが難しいため、そこで使用する食品添加物が「乳化剤」です。

乳化剤とは、その幕を破壊し、水と油の混合に役立てるものです。余談ですが、油汚れをを水と乳化させて落とす、食器洗剤などの界面活性剤と同じ原理です。乳化剤は、植物の油脂から抽出されて作られています。

では、乳化剤をパンに使用するメリットにはどんなものがあるのでしょうか。

例えば、たっぷりバターを使用した食パンがあるとします。この生地には当然、水と油が存在します。乳化剤は、そのパン生地内にある油や水を混合し、生地を安定させます。つまり、マイルドな味わいとふんわりとした均一のある食感に仕上がるのです。
また、耐久性を向上させたり、保存期間を伸ばす効果もあります。なぜなら、水と油を結びつけることで、水分の蒸発を防ぐからです。

乳化剤は健康上に問題はないのか。

しかし、乳化剤には長期的な健康への懸念があるとされているのも事実です。大量に接種されると、腸内環境を変化させ、炎症を引き起こす可能性があるといった報告もあります。

また、一部の研究では、乳化剤の摂取が腸内環境を変化させ、肥満や炎症性腸疾患のリスクを増加させる可能性があるという結果も示されています。

しかし、その影響が長期的にどの程度のものかは明らかではありません。さらに、乳化剤は前述にもあるように、厚労省の管理のもの使用基準が定められています。

総じて、適切な量で摂取される場合、乳化剤は一般的に安全であり、健康に悪影響を与えることのないと考えられています。しかし、長期的に見て安全かどうかの判断に関しては、今後の研究に注目していく必要があるでしょう。

そのほか使われることのある⾷品添加物

頻繁にパンに使⽤される⾷品添加物は以下のようなものが挙げられます。

膨張剤 炭酸ガスやアンモニアガスを発⽣させて、蒸し菓⼦や焼き菓⼦をふっくらと 膨脹させるために使⽤されるもの。
保存料 ⾷品の腐敗や変敗の原因となる微⽣物の増殖を抑制し、保存性を⾼めるため に使⽤されるもの。
⽢味料 ⾷品に⽢みをつけるために使⽤されるもの。
⾹料 ⾷品の⾹りや味つけのために使⽤されるもの。
⾊素 ⾷品の⾊付けのために使⽤されるもの。

無添加のパンとは。食品添加物を避けるために注意すべきこと。

消費者庁により令和4年3月30日に食品添加物のガイドラインを見直され、商品パッケージなどに記載されている「無添加」「○○不使用」という表記が規制されるようになりました。つまり、製品に「無添加のパン」と表記することは現在推奨されていないのです。 その理由には、無添加のパンの定義の曖昧さが考えられるでしょう。無添加を謳っていても、使用している調味料には食品添加物が含まれていたりします。

私たちも「無添加のパン」を表示させることは推奨しません。なぜなら、必ずしも無添加であると保証できるものがないからです。例えば、小麦に使用される農薬も添加物と言えるでしょう。プラスチックの包装が熱で溶けてパンに浸透するという話もあります。つまり、どこで化学物質が使用されているのか、現在社会において全て追跡することは非常に難しいからです。

それでも、食品添加物をできるだけ避けたいという方もたくさんいるでしょう。少しでも安心して食べられるようなパンを作りたい方のために、ベーカリスタが提案するできるだけ食品添加物を避ける方法をご紹介します。

1 パッケージの裏をチェックする。
2 ドライイーストに食品添加物が使用されていないかチェックする。
3 味付けの調味料や加工食品をチェックする。

1 パッケージの裏をチェックする。
市販で販売されている食品のパッケージの裏には、食品表示表というものが必ずあります。そこに記載されている食品添加物をチェックしましょう。調べ方はスラッシュ/以降に記載されている項目は全て食品添加物です。

2 ドライイーストに食品添加物が使用されていないかチェックする。
自家製酵母ではなく、市販のドライイーストを使用する場合も注意が必要です。市販のドライイーストのほとんどには乳化剤などの食品添加物が使用されています。

3 味付けの調味料や加工食品をチェックする。
パン生地には食品添加物を使用していなくても、味付けの調味料やフィリングの具材が加工食品であれば、食品添加物が含まれている可能性があります。また、食品表示に加工食品の品目があった場合、例え食品添加物が記載されていない場合でも、含まれている可能性があります。なぜなら、パンに含まれるトマトソースには食品添加物が使用されている可能性がありますが、トマトソースと表記することができ、その材料の食品添加物を明記しなければならないというルールはないからです。

まとめ

今回の記事では、パンに使用される食品添加物とその健康上の影響、また、食品添加物をできるだけ避ける方法についてご紹介しました。

結論から、食品添加物は避けることにこしたことはないですが、国の法律で安全性が担保されている以上、過剰に反応する必要はないと考えています。

それでも、安心安全の手作りパンを心がけている方のために、少しでも役に立つ食品添加物に関する情報を今後も発信していきたいと思います。