フランスパンに向いている小麦粉とは。

フランスパンのようなハードブレッドはどの小麦粉が一番適しているのでしょうか。なぜ、フランスパンは強力粉ではなく、準強力粉を使用すると良いと言われているのでしょうか。

この記事では、小麦粉の観点からおいしいフランスパンを作る方法をお伝えしたいと思います。

フランスパンに向いている小麦粉とは

フランスパンは一般的には準強力粉が適していると言われています。準強力粉の具体的な基準はありませんが、強力粉よりもタンパク値はやや少なめ、中力・薄力粉よりはやや多め、といったところでしょう。フランスパンを作るなら、小麦粉のタンパク値10%〜11.5%が目安です。

フランスパンの仕上がりは、タンパク値が大きく影響します。
タンパクが多いとグルテン力が強く、ガスを保有しやすいため良く膨らみます。クラムの気泡は小さめです。
一方、タンパクが少ないと膨らみにくいのですが、クラムの気泡が大きくパリッとしたクラストに仕上がります。

フランスパンが生まれたルーツ

ハードブレッドを代表するフランスパン。棒状の形でクラストがパリッとしていて、クラムに大きな気泡があるのが特徴です。

なぜ、このようなパンが生まれたのでしょうか。

一説では、フランス産の小麦がこのようなパンを産んだと言われています。もともとフランス産の小麦は11.5%以下のものが多く、北米産などの小麦と比べると、やや低タンパクでした。低タンパクの小麦粉ではふわっとしたやわらかい食感のパンを作ることはできません。つまり、長時間発酵させないと、旨味のあるおいしいパンが焼けなかったのです。

なぜタンパク値が低めの方が良いのか

フランスパンは普通の強力粉では作ることはできないのでしょうか。実は普通の強力粉でもフランスパンを作ることは可能です。強力粉はグルテンが多く生地がしっかりとまとまるため、むしろ準強力粉よりも作りやすいとも言われています。初めて作る方にはややグルテンが多めの小麦粉、北海道産小麦なら「ゆめちから小麦」を少しブレンドして使用することをおすすめします。

しかし、フランスパンとしての食感や味わいは準強力粉の方が美味しく仕上がると言われています。なぜなら、グルテンが多い強力粉で作ると、膨らみすぎて形が崩れたり、食べた時に歯切れが悪く、噛みちぎりにくいパンになってしまいます。

フランスパンのように長時間発酵させるハードブレッドには、できるだけグルテンが少ない小麦粉を使用するのが良いと言われています。

強力粉と薄力粉をブレンドする場合

実は、強力粉と薄力粉を混ぜれば準強力粉になります。強力粉と薄力粉をそれぞれ8:2の割合でブレンドすると、タンパク値 11%程度の準強力粉を作ることができるでしょう。しかし、タンパク値によってブレンド比率を変える必要があるかもしれません。

例えば、タンパク値が強力粉13%、薄力粉8%の場合、8:2でブレンドすると、蛋白値12%の粉が出来上がります。フランスパン用の小麦粉としては、ややタンパク値が高いです。このような場合は7:3でブレンドすると良いでしょう。タンパク値11.5%となるので、ハードブレッドに適した準強力粉に仕上がります。

北海道産小麦でフランスパンを作るなら

そのまま使用できる小麦粉

シルバーライズは「はるゆたか小麦」と「きたほなみ小麦」を使用したブレンド粉です。パリッとしたクラストにもっちりしたクラムに仕上がります。はるゆたか小麦は香り、甘みが特徴で、食パンに使われることが多いです。タンパク値はやや低めなので、ハードブレッドにも向いています。

はるきらり小麦は北海道産小麦の中でも比較的タンパク値が低く、100%でもおいしいフランスパンを作ることができます。ハードブレッド向けの小麦として広く使用されています。少し引きが強ければ、薄力粉(スウィートムーンなど)をブレンドしてみると良いでしょう。

自分でブレンドを考える

キタノカオリ小麦は非常に吸水性がよく、多加水パンに向いています。薄力品種のきたほなみ小麦をブレンドすることで、ほどよい準強力粉に仕上がります。

キタノカオリストレート(タンパク 12.3%)と薄力粉(スウィートムーン)(タンパク 9.7%)を7:3でブレンドすると、タンパク 11.5%の準強力粉となります。初心者や家庭用オーブンで作る場合は、少し多めにキタノカオリストレートを使用すると、作業性が上がり、綺麗に作ることができるのでおすすめです。

まとめ

今回の記事ではハードブレッド、主にフランスパンに向いた小麦粉を紹介しました。ハードブレッド専用粉もしくは準強力粉がないからと言って作ることができないと言って諦める必要はありません。また、ハードブレッド専用粉だからと言って、必ずしもうまく焼くことができるとは限りません。なぜなら、ハードブレッド専用粉はプロが使用するオーブンを元に開発されている場合が多く、家庭で作る場合は同じレシピでも焼き上がりに違いがある場合があります。

ハードブレッドに向いた小麦粉の特性を理解することができれば、レシピや専用粉などに依存することなく、自身でブレンドすることでパン作りの幅が広がるかもしれません。お手持ちの小麦粉の特性を考えながら、ぜひブレンドをしてみてください!