輸入小麦は悪なのか。

現在、日本で消費されている小麦粉の約9割は輸入小麦であると言われています。戦後、パンや麺類を食べるようになった私たちは、輸入小麦によって食文化が栄えることができました。しかし、消費者の間で輸入小麦に対する不安があるのも事実です。

今回の記事では、輸入小麦についてみなさんに共有したいと思います。

国内で全ての生産を賄うのは難しい。

私たちが食べる小麦のほとんどは輸入小麦ですが、日本で小麦を作られてこなかったわけではありません。実は、日本国内の麦作の歴史は長く、弥生時代から始まっていると言われています。

本格的に輸入が始まったのは戦後です。欧米の食文化や中華料理が国内で急速に広がったことにより、国産の小麦よりもグルテンが多く含まれ、パンや中華麺、パスタに向く輸入小麦が使用が広がりました。
また、学校給食のパンや朝食で米からパンに替わった家庭も増えたため、パン小麦の需要が拡大していきました。

資料:農林水産省「小麦の国内生産量、輸入量、自給率」

国産小麦は自給率は約17%(令和3年)です。そのうち、パン小麦の生産量はたったの5%程度で、私たちが食べるパンのほとんどは輸入小麦が使用されています。また、一人当たりの小麦消費量も年々増え続けています。この現状から、パン市場には輸入小麦は欠かせないものとなっています。

日本国内での小麦の生産量は、戦前から比較しても、そこまで多くはありませんでした。1970年代に国産生産量が激減したのは事実ですが、そもそも小麦需要と比較して、国内生産量の絶対数は少ないのです。その背景には、生産の難しさがありました。日本の気候は湿気が多く、病気やカビが発生しやすいため、小麦の栽培にあまり適さず生産量が増えなかったことも、輸入小麦が増えた理由の一つです。

発癌性のある農薬が使用されていた。

こうして私たちがパンや麺類を毎日食べられるようになったのは、輸入小麦のおかげとも言えるでしょう。その一方で、輸入小麦の農薬に対する不安もあります。その原因となる代表的な2つの農薬があります。ポストハーベストとグリホサートです。

ポストハーベストとは、収穫後に使用される殺虫剤や防腐剤で、小麦や果物によく使用されています。
収穫後の小麦は虫やカビが発生しやすく、輸送中に品質を担保することができませんでした。そこで開発されたのが収穫後に散布する農薬、ポストハーベストでした。特に日本のような、湿気が多く暖かい地域には、ポストハーベストは必要不可欠だったのです。しかし、この農薬は農作物に残留しやすく、発癌性など人体の影響を及ぼす成分が含まれていることが、消費者の間で不安の声があげられています。

グリホサートとは、世界でもっとも使用されている除草剤の成分の一つです。アメリカの事件をきっかけに、発癌性のあるとして世界中で話題となり、各国で使用の制限・禁止が厳格化されている農薬の一つです。日本国内でもグリホサートの基準は定められておりますが、禁止はしていません。日本に輸入される小麦のほとんどに、グリホサートの検出が確認されています。
(グリホサートに関する記事はこちらをご覧ください。)

この2つの農薬が健康被害を及ぼすことで話題となり、輸入小麦に対する不安があります。

輸入小麦は本当に危険なのか。

輸入小麦にはポストハーベストやグリホサートが使用されている可能性が高いため、健康リスクの危険性が指摘されています。しかし、「全ての輸入小麦は危険である」と言うのは、少し大袈裟かもしれません。なぜなら、輸入小麦もさまざまだからです。

例えば、以前のグリホサートの記事では、フランス小麦の残留農薬の検出率が北米産と比べて低いことがわかりました。ヨーロッパではグリホサートの使用を禁止している国もありますし、化学肥料や農薬の制限は、国産よりも厳しい傾向にあります。オーガニック小麦の市場も日本に比べても大きいですし、農薬の安全面では、むしろヨーロッパ産の方が安心できる場合もあります。

また、グリホサートやポストハーベストの発癌性のリスクについてですが、実際のところは不明確なことが多いです。
私たちの健康被害が、グリホサートやポストハーベストに原因である事例はどのくらいあるのでしょうか。発癌性のある食品には、農作物の農薬以外にもさまざまな要因があり、必ずしも農薬に起因しているとは言い切れません。
また、ポストハーベストに限らず、全ての農薬は食品衛生法のもと管理されており、残留基準値が決められています。その許容量は、健康に対する影響は限りなく小さいと言われています。

事実として、グリホサートやポストハーベストは発癌性のリスクがあるのかもしれません。それでも、輸入小麦が日本の食文化を発展させ、今日の私たちの食を支えている側面もあるのです。

それでも気になる方へ。

食に対する考え方は、人それぞれです。私たちはできるだけ多くの方が選択できる小麦の製品ラインナップを開発しています。

初めてパンを作る方や、ポストハーベストやグリホサートが気にならない方は、輸入小麦をおすすめします。国産小麦の品質は向上しつつありますが、外国産の小麦粉の方が製パン性は高いと言われています。

あまり気にならないけれど、できるだけ避けたいと思う方であれば、全粒粉は国産を選ぶのが良いでしょう。国産の小麦には、グリホサートもポストハーベストも使用されていません。外皮に農薬が散布されやすい全粒粉は、外国産であればポストハーベストやグリホサートの残留農薬のリスクは高くなります。国産の全粒粉のラインナップも豊富ですので、ご紹介させていただきます。

全粒粉強力粉

石臼はるゆたか全粒粉

完全に避けたい方であれば、やはり国産小麦を選ぶのが良いでしょう。オーガニックの国産小麦もご用意していますので、ご紹介させていただきます。

有機ゆめちから

有機キタノカオリ

まとめ

今回の記事では、輸入小麦について取り上げました。輸入小麦は ”悪い” という印象をさまざまなメディアで発信されている一方で、輸入小麦は私たちの食を支えている側面もあります。

これまでは個人が選択できるほどの、小麦粉の種類はなかったかもしれません。しかし、国産小麦が普及してきた今、食べるものを自分で考え、取捨選択できるようになりました。

私たちは各々の食に対する考え方を尊重し、幅広くご提供できるための製品ラインナップをご用意しています。原料原産地などの情報も、できるだけ掲載するよう心がけております。私たちはみなさんが安心して使用できる小麦粉をお届けします。