スペルト小麦のアレルギー反応性について。

最近、スペルト小麦と小麦アレルギーについての関心が高まってきました。そこで、今回は「小麦アレルギーを持っている人は、スペルト小麦を食べてもいいのか?」という疑問に、私たちなりの見解をまとめてみました。

結論、小麦アレルギー患者はスペルト小麦は食べてもいいのか?

①セリアック病をお持ちであり、かつ消化器による重度の症状の場合
食べられません。グルテンフリー認証を取得した原料を推奨します。

※欧米での患者数は1%と言われていますが、日本人のセリアック病患者数は0.05%と言われており日本人にとっては非常に稀な病気です。心配な方は医療機関にご相談ください。

②頭痛、だるさ、かゆみなどの軽度の症状、腸などの消化器以外の症状の場合
おすすめはできませんが、一部研究では症状が出ないことが確認されています。
③セリアック病ではない軽度の症状の場合
食べられる可能性があります。また、小麦アレルギーのうち、ほとんどの方がこのケースであると言われています。

つまり、セリアック病のような重度のアレルギー症状をお持ちの場合は、スペルト小麦も避けるべきですが、一般的な小麦アレルギーであれば試してみる価値があるかもしれません。

そもそも、アレルギーとは

アレルギーとは私たちの身体の免疫システムによって引き起こされる症状です。つまり、私たちはウイルスなどの異物から身体を守ろうとしています。小麦アレルギーの反応があるということは、身体がその”現代小麦”(※1)から身を守ろうとしているとも言えます。

小麦アレルギーといえど、症状はさまざまです。代表なものとして、セリアック病と言われる死亡リスクのある重度の病気が挙げられます。また、腸によるもの、肌荒れ、だるさ、太りやすさなど軽度の症状も小麦アレルギーに分類されることがあります。

人間の身体には抗体と言われるタンパク質の分子が存在しており、特定の異物を除外する働きがあります。また、これらは免疫ブログリン(lg)と言われ、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの大きく5つの抗体があると言われています。体内に異物が入ったときにいずれかの抗体が反応し、私たちの身体を守ってくれる働きがあります。

なぜ、小麦アレルギーがあるのか

小麦の成分のうち、抗体に反応しやすい物質として一般的に広く知られているものが、小麦グルテンです。グルテンに含まれるタンパク質の成分(グリアジンやグルテニンなど)が、私たちの身体が拒否反応を引き起こす原因ではないかと言われています。

なぜ、小麦が私たちの免疫システムが異物と認識し、このように拒否反応を起こす原因となってしまったのしょうか。諸説ありますが、小麦の”品種改良”が一つの原因なのではないかと考えられています。現代小麦は食文化の多様化と食品工業を背景に、生産・加工のしやすさを求めて品種改良が行われてきました。現代小麦は小麦本来の形態からかけ離れてしまい、私たちの身体が進化に追いついていない、と考える研究者もいます。

また、いわゆる小麦アレルギーと言われているのは、セリアック、非セリアック、フルクタンの大きく3つに大別されます。

セリアックとは、小麦や大麦、ライ麦に含まれるタンパク質のグルテンに対する遺伝性の不耐症であり、消化器の吸収不良などの症状を引き起こす、重度の病気です。これはIgEに反応すると言われています。

非セリアックとは、腸以外での症状がある場合を示します。頭痛、しびれ、かゆみなどはこれに該当します。現在どの抗体(lgGもしくはlgE)に反応するのかは解っておりません。

フルクタンとは、フルクトース(果糖)の重合体で、小麦の他にもニンニク、ゴボウ、アスパラガス、玉ねぎなどにも含まれています。軽度の消化器による症状はこれに該当します。近年の研究では、小麦拒否反応の症状の一つに、フルクタンが原因であるということが解ってきました。

スペルト小麦のアレルギー反応性について

このように、現代小麦が食を支えている一方で、小麦アレルギー(小麦の体的拒否反応を示す症状)が多くみられるようになりました。しかし現在、ヨーロッパ諸国の研究機関を初めとした研究が進み、スペルト小麦が小麦アレルギーを引き起こす可能性について少しずつ解ってきました。

オーストラリアの研究(※2)では、非セリアック病のグルテン過敏症について、現代小麦と比べ、スペルト小麦はアレルギー反応が極めて低いことが確認されています。

アメリカ内科消化器学会の会報(※3)では、非セリアック病患を対象にし、フルクタン、プラセボ(偽物による検証)、グルテンのどの成分に反応するかを調べた実験では、対象患者の約半数がフルクタンに反応していることが解りました。スペルト小麦はフルクタンが少なく、普通小麦の約1/3ほどであると言われています。(※4)

まとめ

スペルト小麦は小麦アレルギーの大別3つのうち、セリアック病の患者に関しては、残念ながら食べることはできません。セリアック病は遺伝的な要因も含み、小麦以外の稲科の穀物、大麦やライ麦なども食べることはできません。グルテンフリーをおすすめします。セリアック病の診断に関しては医療機関で検査する必要があります。

次に非セリアックの方も積極的にはおすすめできません。なぜなら、スペルト小麦は大丈夫であるという確たる保証は判断できないからです。ただ、最近の研究では、非セリアックであるなら、小麦アレルギーの反応性は極めて低いと考えられます。

最後にフルクタンについてお話しますと、先述した通り、小麦アレルギーの症状で一番多いのではないかとも言われます。非セリアックで軽度のアレルギー症状の方であれば、ぜひ試していただきたいと思います。

 

食べ物アレルギーの中でも、小麦は様々な食品に含まれており、小麦アレルギーの方は様々な食品を制限しなければならず、多くの方が苦労をされています。

人にとって、「食べる事」というのは生きるためもありますが、楽しみでもありコミュニケーションでもあり、エンターテイメントでもあります。私たちはスペルト小麦が小麦アレルギーの方達の食生活をより豊かにする切り札になると考えています。

参考文献:

※1 現代小麦とは現代の食文化に合わせて品種改良された普通小麦と定義します。
※2 Vu, N.T., Chin, J., Pasco, J.A. et al.The Prevalence of Wheat and Spelt Sensitivity in a Randomly Selected Australian Population. Cereal Research Communications 43(1), pp. 97–107 (2015)
※3 Gry I. Skodje, Vikas K. Sarna, Ingunn H. Minelle, Kjersti L. Rolfsen et al. Fructan, Rather Than Gluten, Induces Symptoms in Patients With Self-Reported Non-Celiac Gluten Sensitivity. Gastroenterology. Feb.2018/AGA Journais
※4 Olga Patijn MSc, Peter Voshol PhD, Marieke Battjes-Fries PhD, Edwin Nuijten PhD. Health effects of ancient wheat species compared to modern wheat varieties. Louis Bolk Institute