「LEPO BREAD」 相馬 奈穂さん

お客様の喜ぶ顔を見るために

神奈川県・横浜市にあるパン屋「LEPO BREAD」。
店内に入ると、ショーケースいっぱいにパンが並んでいます。
店主の相馬 奈穂さんが作るパンはひとつひとつに愛が感じられ、なんだか見ているだけで心が温かくなります。

「LEPO BREAD」のパンは、自家製酵母と国産小麦を使った絶品です。添加物や卵をほとんど使用していないため、アレルギーのあるお子さんも安心して食べられます。
「どんな人でも安心して食べられるように」と、奈穂さんがパンに込めた想いを伺いました。

神奈川県・横浜市は、その住みやすさから「全国住みたい街」ランキングで常に上位に名を連ねる場所。美しい夜景やみなとみらいはもちろんのこと、緑豊かな公園が多く、ファミリーにとっても暮らしやすい環境が整っています。そんな街中を散歩していると、わざわざ遠回りしてでも行きたいお店があります。

横浜駅から歩くこと15分ほど。小学校を抜けると、すぐに見えてくるのがパン屋「LEPO BREAD」です。

開店時刻の午前11時には、外には既に待ちわびるお客さんの列。

お母さんと一緒にパンを買いに来た小さな女の子、仲良さそうにメニューを選ぶ夫婦など、地元の人たちが楽しそうに自分たちの番を待っています。

店内からは、ショーケースいっぱいに並ぶパンに「どれにしようかな」と悩む声や、「まだ売り切れてなくてよかった!」という会話が聞こえてきます。

「こんにちは」――笑顔で訪れる人を迎えるのは、「LEPO BREAD」の店主・相馬 奈穂さんです。この地にお店をオープンしてもうすぐ2年。地元の人たちに愛される人気店です。

自分のペースでゆっくりと

お店の中は、ミントグリーンの鮮やかな壁と可愛らしい雑貨がいくつか置いてあり、北欧を感じさせます。フィンランドの雑貨が好きな 奈穂さんのイメージが、店に反映されています。

店名の「LEPO BREAD」はフィンランド語からきています。

「LEPO」とはフィンランド語で「くつろぎ、一休み」という意味。自分のペースでゆっくりと日々を過ごし、訪れるお客さんがパンを食べながら一息ついてほしいという思いを込めて、立ち上げられたお店です。

手前にある店の看板は、奈穂さんの手作り。「文字を美しく見せる手法」のカリグラフィーを使って書き上げました。

「練習したら成果が見えるものが好きで、昔から、書道やサンドグラストなどコツコツ1人で取り組む作業が好きでした。」

ショーケースいっぱいのパン

愛くるしくもあり、美しくもある「LEPO BREAD」のパンたち。ショーケースいっぱいに並ぶパンは、光に照らされて美しく輝いています。
店内に並ぶのは、常時30~40種類ほど。人気商品は、クリームチーズやフォカッチャです。

オープン当初は、食パン、バケット、メロンパンなど20種類程度だった商品が、2年経った現在は倍近くまで増えました。

「季節ごとに、新作を販売するようにしています。また、お店にきたお客さんがショーケースいっぱいにパンが並んでいるのを見て「決められない!」と嬉しそうにしている姿を見るのが好きなんです。」

お客さんを楽しませたい、また来たいと思えるパンを揃えることが、奈穂さんの楽しみでもあります。

「LEPO BREAD」が位置するのは、小学校のすぐ隣。
奈穂さんは地域との繋がりを大切にしています。

年に数回、校外学習の一環で小学生が店を訪れにきます。
『何種類くらい作っているの?』『大変なことなんですか?』など、色々質問をしてくれるそうです。

「質問に来てくれた子が、今度は親御さんと一緒に来てくれました。そうやって繋がって行けるのが嬉しいんです。」

失敗も多かったパン作り

お母さんの影響で、子どものころから好きだったというお菓子作り。
本を見ながらクッキーやパウンドケーキなどを作り、友達にプレゼントして喜んでもらえるのが彼女の喜びでした。

大学を卒業後、事務職についた奈穂さん。
ふと、小さな頃を思い出して久しぶりにパンづくりをしてみました。しかし、パン作りはお菓子作りと違ってうまくいかないことが多く、その面白さに魅了され、徐々にはまっていきました。

「今まで、趣味で色々な習い事をしてきましたがパン作りだけは違いました。自分に合っているというか、パン作りは失敗も多かったんです。だけど難しいからこそ、上手くできた時の喜びが大きくてもっと挑戦したいと思えました。」

「自分でパンが作れるようになったら面白いだろうなあ」と思い、パン教室に通うことにした奈穂さん。コツコツ学ぶのが好きな彼女は、さらにパンについて学びたいと考え、パン学校への進学を決意。平日は仕事をしながらも休日はパン作りの学びに費やす日々を送りました。

パン作りに魅了され、いつしかパン作りを仕事にしたいと考えるようになりました。

30代に入っていたこともあり、仕事を続けるか、それとも夢に向かって新たな一歩を踏み出すか。すぐには決断ができませんでした。

「このまま定年まで仕事を続けようと思いましたが、事務職を続けるのはつまらない…パンの仕事をするなら今しかない。だけど本当にいいのかな?そうやってずっと悩んでいました。」

悩み続けた結果、事務職を辞めてパン作りの道を歩むことを決めました。

彼女の背中を押したのは、純粋に「パンの仕事がしたい!」という自身の強い想いでした。

やっと道がひらけた

会社を退職後、就職した先はチェーンのパン屋でした。個人のパン屋で働くことが彼女の夢だったものの、当時は若い男性が重宝されることが多く、なかなか望み通りの職場を見つけることはできませんでした。

「未経験でパン屋の世界に飛び込んだので、戦力外だと言って、たくさん断られました。」

それでも、憧れのパン屋で働けることが決まったときは、彼女にとって大きな喜びでした。

「パン作りを仕事にするのがずっと夢だったので、『やっと道がひらけた』んだと本当に嬉しかったです。色々な仕事を経験させてもらえて、全部が本当に楽しかったです。」

チェーン店での経験を経て、奈穂さんは個人店での仕事に転職しますが、4ヶ月で店が閉店。再び転職を余儀なくされました。それでも、彼女は諦めずに経験を積みました。

「個人の店は出来合いのものをあまり使っていないので、具材も全て手作りの店がほとんどでした。食材を手作りする経験をできたのがとてもいい経験でした。」

1人で坦々と研究することが好きな奈穂さんは、次第に自分で店を持つことを考え始め、想いが日に日に強くなっていきました。

「年齢的にも体力的にも今しかないと思いました。今しかないからやろう!と決めたんです。」

そうして、約10年続けたパン屋の仕事を退職し、自分で店を開く決断をしました。

時は必ず巡ってくる

パン屋を辞めたあと、 自分の店を持つための第一歩は理想の場所探しから始まりました。

約1年かけて店選びに専念した奈穂さん。
「自分の決断を間違えていなかったら、時は必ず巡ってくると分かっていました。選択が正しければ、多分後悔しないから、大丈夫。そう自分に言い聞かせていたんです。」

自分の信念のもと、じっくりと待つことを選びました。彼女にとって、選択が正しいのであれば、後悔することはないという確信があったのです。

一度決めたことは最後までやり抜く性格だと話す奈穂さん。

「パン学校に通うときやパン屋を始める時、両親や身近な人にはいつも自分で決めてから伝えています。途中で相談したら悩んでる証拠なので、自分で決断してからではないと相談はしません。」

会社を退職したあとも、自分の決断に対して悩むことはありませんでした。

「パン屋を始めると伝えた時は、両親から『大丈夫なの?』と心配されましたが、否定はされませんでした。子供の頃から、私のやりたいことはいつも応援してくれました。」

家族の存在があるからこそ、奈穂さんは安心して挑戦し続けられるのかもしれません。

はじめて挑戦した自家製酵母

店をオープンするまでの間、自家製酵母をはじめました。

「昔、天然酵母のパン屋で自家製酵母パンを買って食べたら、とても硬くて酸っぱかったんです。2度と食べないと思ったし、私にはハードルが高いパンなんだと思っていました。」

最初は天然酵母のパンに対して否定的な印象を持っていた彼女でしたが、SNSで流行しているのを知りました。「こんなにふわふわなパンができるの?」という好奇心から始めた自家製酵母。

「失敗したらやめればいいと軽い気持ちで作ってみました。そしたら意外と美味しい!って、思った以上にうまく作れたんです。」

ヨーグルトやレーズン、いちごなど、様々な素材から酵母を起こして試した経験は、彼女のパン作りの幅を大きく広げました。自家製酵母を使うことで、パンに深みと豊かな風味を加えることができるようになり、それは今日の「LEPO BREAD」のパン作りにも生かされているのです。

念願の『LEPO BREAD』オープン

2022年3月、待ちに待ったオープンの日がやってきました。
念願の夢が叶った瞬間でした。
しかし、パン屋の仕込みを全て1人で行うのは想像以上に大変なものでした。

自家製酵母で作られている生地は、2週間ほどかけて丹精込めてつくられています。
店が休みの日でも、仕込みは時間をかけて、丁寧に行います。

それは、「自分が本当に美味しいと思えるパンを提供したい」という強い思いからきています。

誰でも気軽に食べてもらえるパン

奈穂さんが大切にしているのは、「誰でも気軽に食べてもらえるパンを作ること」。

「昔、アトピーを持っていたので元々アレルギーには関心がありました。それに、卵を使ったパンもあまり好きではありませんでした。今作っているパンは、カスタード以外は卵を使っていません。食べなくてもいいものは基本使わないことを心がけています。それで美味しいなら十分なんです。」

アレルギーのお子さんでも安心して食べられ、子どもたちの選択肢を広げられるパンを作ることを心がけています。

「『いつもはパンを食べないのにぺろっと食べちゃった!』と、2〜3歳のお子さまを持つお母さんから喜んでもらえたんです。」

お客様に喜んでもらえることが、何より奈穂さん自身の喜びなのです。

お客様を思ったパンのメニュー

オープン当初と比べて、パンの種類も変わっていきました。

「以前は、自分の『これだ!』と思う自信作だけを提供することにこだわっていましたが、お店を始めてからは「どれを食べても美味しい!」と言ってリピーターになってくれるお客様のために、そして毎週楽しみに来てもらえるように、彼らに喜んでもらえる商品を作りたいと考え方が変わっていきました。」

お客様のニーズに合わせて、季節ごとに2~3種類の新商品を作っています。
「新しい商品が思いつかなかったり、せっかく作った商品が売れないとしんどいなあと思うこともあります。だけど、やっぱりお客さんの喜ぶ顔が見たいので、これからも、長くお客さんに喜んでもらえるものを作っていきたいなと思います。」

お客様の喜ぶ顔を見るために

現在「LEPO BREAD」は週3日の営業です。

「どんなに忙しくてもパンの種類は減らしません。『わあー、迷っちゃう!』ってショーケースに並ぶパンを見て喜ぶお客さんの顔が見たいんです。」

「どんな人でも安心して食べられる」自家製酵母と国産小麦の店「LEPOBREAD」。

お客様の喜ぶ顔を見るために、今日も奈穂さんは優しい思いの詰まったパンを届けます。

LEPO BREAD| れぽ ぶれっど


神奈川県横浜市
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