小麦粉専門店が選ぶ、良い小麦粉とは

パン作りにおいて「良いパンには良い小麦粉が必要」という表現を見かけることがあります。しかし、「良い小麦粉」とは具体的にどのような小麦粉を指すのか、少々疑問に思う方もいるかもしれません。

今回の記事では、パン材料を取り扱う私たちだからこそお答えできる、「良い小麦粉」とはどんな小麦粉なのかを皆さんに共有したいと思います。

結論、良い小麦粉とは?

小麦粉にももちろん、良質なものとそうでないものがあります。
私たちが考える”良い小麦粉”とは、そのパンに最適で、かつ「おいしい」小麦粉を指します。

「おいしい」という表現は抽象的かもしれませんので、もう少し具体的に説明しますと、小麦粉が特定のパンに適した特性を持ち、それがうまく活かされることがおいしいパン作りの秘訣だと考えています。

例えば、食パンを作るのに薄力粉を使用することは可能ですが、香りや味、食感は強力粉を使用した場合に比べて劣ると言われています。それは、食パンには薄力粉よりも強力粉が適しているからです。

つまり、小麦粉の選択にあたってはその特性、製粉方法、品質を考慮することが重要となります。

等級の話(1等粉〜3等粉、全粒粉)

小麦粉には1等粉、2等粉、3等粉といった等級が存在し、これらは小麦の粒の部位の違いによるものです。

小麦の粒は部位により味、風味、栄養成分が異なります。粒の中心部ほど、でんぷんが豊富で白い色調を持ちます。対照的に、粒の外側に向かうほど、タンパク質やミネラルが多く含まれます。

これらの部位から得られる小麦粉が、それぞれの等級となります。1等粉は中心部分から、そして2等粉、3等粉は粒の外側から製粉され、表皮に近い部位を多く含みます。その結果、灰分が多く含まれ、色は濃く、風味も強くなります。

製粉の方法が違うと味も変わる。

製粉方法は大きく分けて二つ存在します。ロール挽きと石臼挽きです。これらの違いを理解することで、パン作りの目的に合った小麦粉を選ぶことが可能です。

ロール挽きは、大きなスチール製のローラーを用いて小麦を圧縮し粉砕する方法で、一般的にはこの手法が小麦粉製造に最も多く使用されます。高速で効率的に製粉を行うことが可能であり、大量生産に適しています。
また、ローラーの調整によりさまざまな粒度の小麦粉を製造することが可能です。ロール挽きで作られた小麦粉は色が白く、きめが細かいです。

一方、石臼挽きは大きな石を用いて小麦を粉砕する伝統的な方法です。ゆっくりとした速度で小麦を粉砕するため、小麦粉の栄養素を保持することが可能です。このため、石臼挽きの小麦粉は風味が豊かで、栄養価が高いとされています。

そして、ロール挽きと石臼挽き以外にも、製粉会社によって気流粉砕などといった独自の技術を用いて製粉されることもあります。

良い小麦粉を選ぶ方法7つ。

小麦粉と言えば、強力粉や薄力粉のような白い粉が思い浮かぶ方が多いかもしれませんが、それだけではありません。全粒粉やグラハム粉、ふすまなど、さまざまな種類の小麦粉が存在します。また、製粉方法によって、粒度の粗いもの、細かいものがあります。

同じ小麦粒でも、部位や製粉方法によって、味や品質が大きく変わります。

今回はパン作りに必要な強力粉(全粒粉などは除く)について限定し、良質な小麦粉を見極めるための方法を7つご紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。

良い品種を選ぶ。

良質な小麦粉を選ぶためには、良い品種を選ぶことが重要です。しかし、品種の特性はさまざまで、一長一短です。

例えば、ゆめちからという小麦は良質なタンパク質を豊富に含んでいる一方で、春よ恋という品種はその香りの良さで評価されています。この二つをブレンドすれば、それぞれの特性を活かすことができます。

また、小麦の味はその年の栽培状況によっても変化します。過去の天候の影響で、例えば雨量が多かった年は低アミロースの小麦が生まれることもあります。また、病気などにより収穫量が低下した年の小麦は、品質も低くなる可能性があります。

吸水の良い小麦粉を選ぶ。

パン作りにおいて、小麦粉の吸水性はとても重要です。

吸水性が高い小麦粉はパンを乾燥しにくくし、フレッシュさを長期間保つことができます。また、より多くの水分を取り込むことで、パンの食感と風味を向上させ、しっとりとしたやわらかいパンを作ることができます。

吸水の良い小麦粉を選ぶポイント

・タンパク量が高いもの
・粒度が細かいもの
・吸水性の高い品種のもの
・硬質小麦のもの

パン作りが初心者の方や、食パンなどのやわらかい食感のパンを作りたい方には吸水の良い小麦粉をおすすめします。逆に吸水性がよくない小麦粉は、製パン性の難易度が上がり、パンの膨らみもよくありません。

パンの吸水について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
「パンのパサパサを防ぐ吸水の話。」

おすすめの吸水性の高い小麦粉

吸水性の高い国産小麦の品種は、「ゆめちから」と「春よ恋」です。パウダースノーはゆめちから小麦と春よ恋小麦をブレンドした、吸水性に優れた小麦粉です。

グルテンの多い小麦粉を選ぶ

グルテンはパンのボリュームとやわらかさに大きく影響を与えます。

グルテンが豊富な小麦粉を選ぶことには、大きく二つのメリットが存在します。初めに、グルテンはパン生地が十分に膨らむために必要なグルテン幕を形成します。また、グルテンは高い保水性を持つため、パンが長持ちするのを支えます。対照的に、グルテンが少ない小麦粉を用いると、パンは十分に膨らむことなく、乾燥してパサつく可能性が高くなります。」

しかし、グルテン量が少ない小麦粉が必ずしも劣っているわけではありません。ハードブレッドのような長時間発酵のパンでは、グルテンが少なめの準強力粉がよく使われます。その理由は、グルテン量が過剰に多いと、ハードブレッド特有のパリッとしたクラストともちもちとしたクラムを作り出すのが難しくなるからです。

良い性質のでんぷんを選ぶ

でんぷんの性質にもパンに適したものとそうでないものがあります。
パン作りにはできるだけ高アミロース(30%程度)のものが推奨されています。

アミロースとは、でんぷんに含まれている主要成分です。
アミロース値が高いほどさっくりとした食感に、低いほどもちっとした食感になります。例えば、もち米のアミロース値はほとんど0に近いものです。

製パン性に優れている外国産小麦品種の1CWのアミロース値は30%程度です。一方、パン用の国産小麦のアミロース値は27%前後で、やや低アミロースの傾向があります。その結果、国産小麦を外国産小麦と焼き比べると、ややもっちりとした食感になります。

もっちりとした食感のパンを好む方もいますが、一般的には軽い食感が好まれるため、パン製造にはアミロース値が30%前後の小麦粉が推奨されています。

小麦粉の色が濃いと香りが良い

小麦粉の色調はパンの見た目に大きく影響します。白い小麦粉から作られたパンは色調が明るく、一方で色の濃い小麦粉は灰分(ミネラルなど)を含むため、香りが強い傾向があります。

製パン性だけで考えれば、1等粉などのできるだけ白い小麦粉が推奨されていますが、味や香りを引き立てたい場合であれば、やや色味のある小麦粉がおすすめです。

おすすめの香りの良い小麦粉

「キタノカオリ」という小麦品種は黄色味が強く、それが特有の風味を作り出します。キタノカオリストレートは吸水にも非常に優れており、バゲットやハードブレッドなどにおすすめです。

粒度の小さいものを選ぶ

小麦粉の粒度は細かければ細かいほど、パンの吸水性をあげることができ、結果として製パン性が上がります。

粗挽きや粒度の大きい小麦粉は吸水性が低いと言われています。なぜなら、粒度が小さい小麦粉と比べて、粉と水の接触面積が小さいためです。

よりふっくらしたパンを作りたい方であれば、粗挽きの小麦粉ではなく、細かく粉砕された小麦粉がおすすめです。

しかし、粗挽きや粒度の大きい小麦粉はハードブレッドに適しています。
ハードブレッドは発酵時間が長く、水分を十分に浸透させるために十分な時間を与えることができます。大きい粗挽きの粒に水分を中まで浸透させると、生地の乾燥を防ぐことができます。

小麦の挽きたては香りが良い。

一般的な小麦粉は、加工性を向上させるために一定の熟成期間が必要ですが、挽きたての小麦粉はその香りが極めて豊かで、風味が際立ちます。

しかしながら、挽きたての小麦粉は容易に手に入れることが困難です。
一部の小規模ベーカリーでは、工房内に石臼を設置し、自家製の小麦粉を作っているところもあります。

私たちベーカリスタでは、挽きたての香りが堪能できる新商品の開発を進めています。

まとめ

良い小麦粉とは、特定のパンの製造に最適で、かつその美味しさを引き立てるものです。このような小麦粉を見つけ出すには、小麦粉の特性について理解を深めることが必要となります。

小麦粒の部位、品種、製粉方法などがパンの風味や用途に大きな影響を与えます。ただし、いくつかの特性は実際に使用してみないと分からないことも多いです。そのため、自身に最適な小麦粉を見つけるためには、これらの知識をベースに色々な小麦粉を試すことをおすすめします。

ベーカリスタでは、パン作りに役立つ情報や、パン作りをより楽しむためのアイデア、さらにパンや小麦に関する知識をお届けします。